なぜ当時、耳の不調が脳までダメにするを書いたのか。
なぜ脳の話をしたのか
この本は、講談社の岩崎さんといっしょにつくった本だ。読み手は、働き盛りのサラリーマン、それも50歳から60歳あたりであるとダーゲットに絞り込んで書き下ろしたものだ。若い人や高齢者はまったく読者として想定しないということで書き上げました。難聴を放置するといまのあなたのパフォーマンスは維持できませんよと少しばかり脅かすことで聞こえにもっとも関心をもってもらおうと書いたものでした。
当時は、大企業からつぎつぎに騒音職場がなくなっていく時代でした。
製造業の現場はロボット化が進み、騒音の劣悪な場所での労働機会は激減していました。確かにいまでも重工業の現場には騒音問題がありますが、この20年で騒音職場で働く人は減っています。
にもかかわらず、難聴が減らない。そう、音の管理だけでなく、全身的に健康管理も大事だよと。スキマ狙いで世に問うた作品だったのです。
難聴の一番の原因である騒音暴露よりも二番手三番手の動脈硬化や糖尿病に振った話を展開したわけです。
しかし、2004年以降のメタボ健診のおかげかはわかりませんが、いまではもうメタボオヤジを探すのもむつかしくなりました。
今ふたたび騒音問題
ぼくのほうもてっきりこれからは騒音問題は起こらないと思っていた矢先にwhoから大変な報告が上がってきました。15歳から35歳の難聴者と難聴予備軍が11億人もいるというショッキンな報告がだされ確かにらです。
日本でも自己申告による調査で、15から24歳の難聴が、本来1.0%未満くらいかと思っていたのが3%超えていることが明らかになり、ここにきてカジュアルリスニングに対するリテラシーが大きな課題としてクローズアップしてきたわけです。
聴覚情報処理障害という原因不明の病態の中には、脳だけでなく、ない有毛細胞の損傷による雑音下での弁別低下もあるかもといま僕自身は大変注視しています。
新幹線通勤が始まりぼくのきこえも劣化が始まっている^^;
東京と那須塩原を足しげく往復する生活がすでに5年。それ以前の5年に比べるとぼくのきこえは確実に劣化している。
周囲は、「加齢でしょ」 とことなげに言い放つが、そんな時ぼくはかならず「加齢と難聴に関係はない」と返事します。加齢と難聴ではなく、騒音暴露機会が長生きすると増えるから、食習慣や運動不足で血流が悪くなるから自己修復できなくなるんだと言い返しています。
新幹線の騒音が平均83デシベル。
もっともっと音のことについてぼくらはクレームするべきだと思う
まずは自分の周りにどれほど有害な音が溢れているかきちんと調べることから始めませんか?
新幹線に比べるとバスの中は平均レベルは小さいのですがピークは94デシベルとかえって大きくなっています。
ぼく自身の音量設定を確認してみると、今日はたまたまボーズのノイズャンセルをもちあわせてなかったせいですが、平均レベルの小さなバスの中の方が新幹線車内よりも音量で3目盛以上も大きな音で聞いています。
聞きやすさを優先して必要以上に大きな音で聞いてしまっていたようです。
ではでは^ ^
なぜ難聴になるのか⁉︎
過剰な音暴露が難聴のいちばんの原因
難聴が進む第1の問題は音暴露にある。
音暴露には二種類に分けて考える必要がある。即時的に障害をもたらす120デシベル以上の音による音響外傷と一定時間晒される(音圧レベルと暴露時間の積)で生じる騒音性難聴である。
音響外傷による障害
120デシベルの音にほんの一瞬でもさらされると私たちの耳に間違いなく耳鳴りが生じる。音にさらされた翌日の朝、キーンと耳鳴りが聞こえたら前日に120デシベル以上の音にさらされた可能性があると考えた方が良い。おそらくは多くの人は二、三日でそうした耳鳴りが消える。そこで安心してしまう人が多いが実はその時点ですでに内有毛細胞の働きは部分的には致死的状況になっていることが多い。自己修復できないことが多いのだ。
純音聴力検査ではこの問題を見つけることができない。この聞こえのエラーをかくれ難聴Hidden Hearing loss と呼んでいる。
これを見つけるには閾値レベルのノイズを付加した状態の聴力レベルを測るTENテストとかDPOAEでノイズフロアを測ることしかない。これらでかくれ難聴の存在は明らかにすることができる。
瞬間的であっても内有毛細胞の一部でこうした障害が生じる。われわれの日常生活は常にリスクの中にある。
生活のどこに音響外傷のリスクがあるのか?
数年前、米国ではサッカースタジアムの声援が140デシベルを超えた。その瞬間はギネスレコードにもなっている。
インサートイヤホンの最大音量は120デシベルまで出るものがある。不用意な操作法で不意に大きな音にさらされてしまうことがあるが、そうした取り扱いそのものが難聴の原因になる。よくデザインされた音響機器は電源オフにすると音量も低音量にリセットされる。これならスイッチを入れた瞬間に大きな音にさらされてしまうことがない。
高度難聴用の補聴器には130デシベルまで出るものもある。難聴が進むと耳も壊すような大きな音でも不快感を感じにくくなる。難聴が不快音に対する耐性を作るのだ。それ故に補聴器装用者は時に必要以上の音量を求めてしまうことがある。ラウドネスや感覚レベルだけをたよりに補聴器を調整していると装用年数が増えるにつれて難聴も進行してしまう。補聴器の音響特性をそれも装用時の状態を正確に測ることでこうした事態が発生することを回避できる。Real Ear Measuent 実耳による評価で調整すればよい。そうした手間をせずに補聴器を渡している販売店は少なくない。
補聴器が難聴を作ってしまうのでは本末転倒としか言いようがない。
交通事故のときの衝突音は瞬間ではあるが140から160デシベルに及ぶことは稀ではない。
インパクトレンチや金属のハンマーで金属板を叩くときでも瞬間的ではあるがそうした外傷レベルの音になることがある。
120デシベル以下でもあぶない
WHOは2015年3月に、Make Safe Listening Projectを立ち上げた。
世界中のハイティーンが難聴のリスクにさらされていると警鐘を鳴らしたのだ。
イヤホンで耳が耐えられる時間はたったの59分。
スマホの普及した今、若者はそれ以上の時間、イヤホンで音楽を楽しんでいる。
ヘルメットなしだと法令遵守したマフラーの原付のライディングであったとしてもたった47分で難聴のリスクにさらされる。
上限を超えると120デシベルの時と同じようなかくれ難聴が進行していくことになる。
スマホの普及は今より高い年齢層の世代にも普及している。この世代も若い人のように音楽を書くことはないかもしれないがオーディオブックや語学学習とかが原因でその時間が長過ぎれば難聴を進めてしまうリスクがあると考えた方が良さそうだ。
120デシベル.........28秒
95デシベル.........,,59分
85デシベル........,,4〜8時間
耳に悪さしない許容範囲と言われている。ロックコンサートも花火大会も運動会も許容時間は30秒足らず。乗り物に裸耳(耳栓もせずに)でのってよいのは片道2時間ということになる。旅行にいくことにそのものが耳を悪くすると言っても言い過ぎではないだろう。
なぜ自己修復できなくなるのか
耳栓して耳を守る、はなからうるさいところにはいかないというのが一番であるが、万一、大きな音にさらされてしまった時には、以下に挙げるいくつかの対策を講じるのがよい。
- たくさん水を飲む。それも硬水が良い。普段より余分に1.5リットルくらい。
- 聞き取れるもっとも小さな音量のレベルよりも大きな音は聞かない。ただし全く静寂というのもよくないのでかすかな意識しないと消えてしまいそうな音量で音楽をBGMするのが良いだろう。
- 糖質制限と脂質制限をする。2日ぐらいプチ断食するくらいの覚悟で。
- 1時間以上同じ姿勢をしない。アップルウォッチやフィットビットなんなどのスポーツウォッチならスタンドアップアプリがあるから簡単に時間ごとに立ち上がる習慣を得ることができる。
- 最低限一日、10000歩以上の活動量とそのうち30分はエクササイズレベルの負荷とする。
要は、
- 酸素不足
- 脱水
- 高血糖
- 高脂血症
- 運動不足
- 耳やすみ時間の不足
が耳を悪くするということになる。
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ぼくは、 右手首のアップルウォッチエデション、左手のチャージ、そして、携帯電話のできる耳栓ソニックディフェンダーで武装しています。
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なにごとにも表と裏がある。
ハツカネズミは寿命3年、ネバダネズミは30年。
加齢の仕組みについての研究がグーグルの資金で進んでいる。
グーグル、15億ドルを投入する「不老不死研究」の狙い(前編)
加齢はなぜ起こるのか。
それを考えるときぼくたち医者はどうしてもパーツから考えてしまう。
加齢全体を云々するのではなく、耳や目や皮膚といったパーツにブレイクダウンしてそこから考えてしまう。
耳の衰えは、騒音・耳の休息の不足・血流や代謝から議論される。目だと紫外線と血糖、皮膚も同じように紫外線と末梢循環が関係する。目と皮膚はさらに乾燥も問題になる。
老化に伴い聞こえは遠くなるし、目はかすんでくる。皮膚に至ってはカサカサで見た目も悪くなってしまう。しかし、耳栓でうるさい音にさらされる累積を少しでも減らしたり、サングラスなどでドライアイ対策をしたり、オイルやクリームたっぷりにスキンケアしていると老化はいくぶんかめに見えてブレーキがかかる。末梢受容器としての耳や目は確かにそうした理由から老化を議論するだけでも良いのかもしれない。
しかし高次脳機能と言う点から脳の機能の維持と言う視点から、老化を考えるとなるとそんな簡単な話にはなりそうもない。五感の老化を考えるとき、聴覚、視覚、嗅覚、体性感覚の老化の予防は末梢器官よりももっともっと複雑だ。
内因と外因
ものごとはいつも2つ以上のルートがあると考える必要がある。人生を考えるときは8種類くらいの未来をいつも想定しておきべきだと中学時代の恩師大西先生はよくぼくらにそういっていた。当時は少林寺拳法を習っていて、そのせいで八方目と言う所作を嫌ほど仕込まれていた時期だったので人生を8パターンの選択肢で生きていけと言う教えはすんなり受け止めることができた。最近ぼくがはまっているニューロマーケティング思考から考えても8種類の設定はすごくリーズナブルだ。オンリーワンとか二者択一にしてしまうとどうしても好き嫌いや恐怖や怒りで処理してしまう面が大きくなりすぎてしまう。5つから選ぶのは選択したという感情面において達成感や自己決定感を感じやすいかもしれないが凡人が自信を考えるときの選択肢が5つしかないのは失敗する選択肢ばかりを羅列してしまっている可能性もあり、用心が必要だと思う。8つの選択肢を想定しつつそこから一つを一気に決めるのが判断としては良いとぼくはがんがえている。
閑話休題。老化の原因について話を戻す。
老化は、ブレイクダウンして目とか耳とかの劣化から老化を議論しようとするとそこには明らかな2つのベクトルがある。内因と外因である。自己責任の話とほかから降りかかった火の粉の話ということになる。
- 外因としては、振動や音、紫外線、乾燥などひとが地上に上がったことで負荷が大きくなった、大気と太陽の影響する問題をそうした問題の発生要因としてあげることができるだろう。
- 内因としては、食事、運動、水分補給、糖質制限、脂質制限、減塩などがある。
しかし実際にはそんなに単純ではない。
つづく
ステレオサウンド社訪問^^
こんにちわ 聴覚評論家 なかがわです。
今回は昨日訪問したステレオサウンド社と一足早い年越しそばの会のことを報告します。
5月に上梓予定のムックに掲載予定の記事の絡みで昨日ステレオサウンド社を訪問しました。
まずは写真撮影ということで、六本木ヒルズ周囲の瀟洒な建物の周りでいくつかの写真を撮影。
その後、インタビューという流れであっという間に3時間ほどの時間が過ぎました。なんだか変な天候で、さーっと通り雨が降ったり、気温も19度近くまで上がりで、インタビューの間は撮影もあるため上着もげずで冷房をきかせっぱなしでした。
撮影とインタビューご終わってヒルズを通りけるころにはあたりも暗くなり始め、クリスマスイルミネーション目当てのカップルや観光客がそぞろ集まり始めてくるタイミングでした。
その足で、神田まで移動、毎年恒例の蕎麦を喰らう会へと。
17時30分開始の予定でしたがひとが集まり始めたのは18時30分すぎ、皆さんなかなか多忙だなと。
20名弱の方々にお集まりいただきました。
四年前から始めたこの会はもちろん僕が主催者で、一年お世話になった方々やこれから一緒に何か新しいこと始めようぜみたいなメンバーを厳選してできるだけ異業種の方を優先して開催しています。
サプライズ参加いただいた中石社長だったのですが、なんと参加者の何人もがお知り合いだったのにはびっくり‼️
来年はもっと工夫していろんなサプライズのある交流会にしなければとおもいをあらたにしたところです。
中石社長は、「装用しない補聴器」をうたい文句に軽度難聴から中等度難聴の方の聞こえを支援するオーディオシステムを販売されています。
いわゆるコーンスピーカではなく平板なフラットスピーカで、そのために音の直進性に優れ、話声域の周波数のことばの明瞭度が格段に優れるという特徴を持っています。類似するものとしてはサウンドファン社の未来スピーカとかエルシー電気のLCC-100とかフォナックのロジャーとかがあります。
みらいスピーカはユニバーサルサウンドデザイン社のコミューンと同じようにフラットパネルをダイヤフラグムに用いたスピーカです。ただしみらいスピーカは下敷きのような四角のパネルをベントさせたものを振動パねるとひして使ってます。エフ特でみると4000ヘルツ以上の音が極端に減衰されています。そしてそれ以下の帯域もフラットな特性になっています。
高域の難聴部分がdead region 不感領域になっていてかつ45デシベル前後の難聴の人の場合このスピーカなら内耳ひずみが生じにくいので聞きやすくなるようですか、指向性にとぼしく、ハコ(部屋の構造)次第では残響があまりに生じにくくかえって聞こえにくくなるというデメリットもあるようです。ひとりでラジオやテレビを楽しむのならもってこいのスピーカですが、たくさんの人のなかではその音の特性ゆえに不自然さを感じる健聴者も生じてしまうのでその活用法はかなり限定的なように思っています。
フォナックのロジャーはいわゆる線音源スピーカです。直径10センチ程度のツイータのようなスピーカを縦に数個ならべて
横方向の広角は広がりを持たせ、縦方向は相互干渉させることで直進性を持たせ、通常のスピーカでしばしば生じる天井に向かった成分がぶつかってふたたび上から反射し、いわゆる残響を引き起こすのを最小限にする技術が搭載されたスピーカです。学校の教室で教壇上の先生の声を生徒に聞かせることを目的に開発されています。教室という箱を前提に開発されているので限定的な活用になってしまいがちですがFM補聴器にも音を飛ばせるなどのメリットもあり、学校では強力なツールになっています。
エルシーのスピーカは上述したふたつとはかなりおもむきが異なります。ことばの明瞭度だけでなく音楽の自然さも担保しているからです。内耳ひずみを起こしにくい内耳が疲れにくいといえばよいでしょうか。外有毛細胞の抑制的な働きは標的音ではなくノイズに対して作用する働きですが、エルシーの澄んだ音だとそうした内耳で行われるノイズキャンセルの働きが不要となり長い時間音楽を楽しむことができるのではないかとぼくなりに解釈しています。コーンエッジの作り込みにエルシーの音の良さがあると考えています。
こうした一般的な多数の聴者を対象として支援するスピーカの対極として、まさしく補聴器の対抗馬として登場してきたのが、ユニバーサルサウンドデザイン社のコミューンです。円形のフラットパネルから話声域を考慮した音が超指向性に出力されるシステムです。装用しない補聴器というネーミングはまさにツボを押さえた説明だとおもいます。
外勤先のクリニックにコミューンseが試験導入されているのですがこの一ヶ月の使った感じでは、隣の診察ユニットに座した患者さんには影響しないその超指向によって診療はずいぶん楽になるように感じています。
世の中にはいろんなスピーカがあります。ステレオサウンド社のリスニングルームで拝見させていただいたようなオーディオに特化したものでも、クラシック向きとかジャス向きなんて個性があるように、生活支援のスピーカも、個人向け、少人数向け、大人数向けと色々あり、難聴のタイプによって使い分けが必要です。
一対一でのコミュニケーションの質を高めるという意味では、周囲にいたづらにうるさい音を撒き散らすことのないコミューンのサウンドデザインは、個人情報保護を担保してくれる点でも大変優れた設計にあると思います。
そういえば2日遅れで、いとこ煮を食べました。
おわり。、
補聴器の両耳装用について
両耳装用の適応とは
20世紀のおわりに両耳装用のブームが生まれました。
そして脳科学の一通りの知見から21世紀の今、必ずしも両耳装用である必要がないと議論されるようになっています。
現時点での両耳装用の処方とはきわめて高度な知識を要するチャレンジになってしまっています。
次のような事例が両耳装用の適応のようです(参考 Hearing aids 2nd)。
- 左右ともベントなどの付属部品も含めて同じスペックとし同型式のものを処方する
- 左右差のない感音難聴(もっとも良い適応は軽度難聴)
- フィッティングは優位半球(きき耳)を考慮した左右異なる調整とする
- NALかDSLかは大きな問題とならないがREMは必須。
追加として、
- 語音明瞭度の悪いケース
- 高度難聴以上のケース
などが適応になるとしています。
このことは逆に言うと次のようなケースは両耳装用の適応にならないこと(慎重であるべきこと)を意味します。
- 左右差が40dB以上ある場合
- 左右に同じ型式の補聴器を装用できない場合
- 左右の難聴のタイプが異なる場合
- 優位脳がない場合
こうした考え方は補聴器の技術進歩によって早晩改められるものであってその方針が法律のように永続的なしばりになるものではありません。時代とともに考え方は変わると言うことをまずもって理解しておく必要があります。その意味でここで展開する私の話は2012年の技術をベースに考えた両耳装用とはかくあるべしというはなしになるのでしょう。
両耳装用の黎明期
両耳装用というコンセプトで補聴器販売が精力的に展開されたのが、1996年になります。それまでにも両耳に補聴器を装用させることはありましたが聴覚生理学的な裏付けはとぼしかったのが、プログラマブルによって生理学的な事象を反映させながらフィッティングかのうとなったからです。この年、スターキー社から両耳装用用補聴器「セテラ」が登場しました。
両耳装用を原則としたプログラマブルアナログ補聴器の登場によってはじめて左右の補聴器をひとつのシステムとしてフィッティングさせることが可能となったのです。
セテラは真に画期的技術を搭載した製品でしたが、当時のクリニシャンのレベルではその価値を理解することは困難でしたし、処方上の制約、例えばサイズはITE型、フェースプレートの向きは正確に外方を左右同じ角度を向くこと、指定されたベントサイズをもちいること、実耳計測を必須とすることなど、当時の現場ではほとんど対応できずでした。結果としてセテラはその効果をクライアントに体験させることができないままにカタログからから消えてしまいした。
その後も補聴器はデジタル化をおしすすめました。アナログ時代は音量、音質、MOPをいじることであるいはそこにチューブやベントや耳せんを工夫することで高域と低域のバランスを調整するというのが主流でしたが、2chデジタルでそれは容易に調整可能となり、数年もしないうちにチャネル数は32を超えるほどにまで拡大されました。ch数が増えた今われわれはふたたび低域中域高域くらいの調整しかおこなわなくなっています。これはNAL2などのフィッティングソフトが、オージオグラムに対して厳格に増幅値を設定する方法ではなく、chとchの間のchをより自然なフィッティングのためのスムージングのために活用するようになったからです。
置き去りにされた両耳議論と一人歩きしたデジタル革命
つづいて、第2世代の時代に入ります。いわゆるオープンフィッティングの波がそれに当てはまります。デジタル化でチャネル数が増えたことにより使用しないch、つまり他のことに活用できる余裕が生まれました。まずそうしたchの活用としてハウリング対策に使うことがおこなわれるようになります。ハウリングを生じている周波数を見定め、その周波数の音をハウリングの生じない周波数帯に移転して展開するという工夫がおこなわれるようになりました。もちろんこうした手法では、まずフィードバック発振の存在を補聴器自身が認識する必要があるので真のハウリングゼロにはなかなかなりません。当時のデジタルはAD/DA変換に4msくらいかかってたので「プッチ」というようなとても小さなノイズとしてのハウリングをゼロにすることはなかなかできませんでした。64chの時代になり、処理速度も1〜3msになりハウリングフリーの補聴器が生まれたそれが第2世代デジタルといえるでしょう。
こうしたハウリング対策技術の発展型として周波数移転技術が生まれます。ワイデックスが当初提案した方式は補聴効果の得がたい高音域(不感領域、デッドリージョン)を増幅してもむだだからその音をハウリングの防止で移転する時の要領で他の周波数にシフトしてしまうと言うやり方でした。しかし当時は、周波数ベースで単純にその帯域の情報を移動しただけでしたから、移動された帯域で元々の音と移転された音とが干渉し当初期待された明瞭度改善という効果をもたらすことはありませんでした。小児難聴についての洞察が深いフォナック社はワイデックスとは別な視点からこの問題に取り組んでいました。彼らはナィーダと呼ぶ周波数圧縮技術を提案しました。ワイデックスの移転と大きく異なるのは高域から中域の音を例えば、8000〜2000Hzの帯域の音を6000Hz〜2000Hzの範囲へとノンリニアに圧縮して展開する方法を選択したのです。移転と異なり干渉のリスクはなくなりましたが音質の変化という大きな壁に突き当たります。小児例のように言語獲得期ならそうした歪みは問題になりませんが、成人例ではフォルマントパターンの変化は過去の記憶の活用において非常に不利になってしまいます。周波数遷移分布パターンが変化してしまうことは聴覚印象上あまりよいことではなかったようです。いまでも周波数圧縮の技術は小児難聴例では絶大な効果を示していますが、成人例では、移転か圧縮かは大きな悩みどころです。TENテストなどができればこうした選択上の悩みはいまよりはづっと明確に判断できることでしょう。
2.5世代と3世代デジタルの時代
ぼくは、適応型のアレイによる指向性の精度アップと過渡特性から音声と衝撃音を瞬時に区別することが可能な高速のCPUという2つの技術は確かに優れていますが3世代と呼ぶレベルではないと考えています。
ひとまずここで筆おきます()
『君の名は』 (注意!ねたばれあり)
久しぶりに泣きました
ANAの羽田 北京便で話題のアニメ映画 『君の名は』 をみました。
往復で結局3回もガン見してしまい。
挙句に3回とも涙腺ひらっきっぱなしでした。
こうしてブログを書いている今も
『タキ』
「よつは」
というエコーが耳の中で鳴り響いています。
何回も立て続けに観た映画
こんなにも何回も立て続けに観た映画といえば・・・
の4つくらいでしょうか。
確かにグランブルーとかニューシネマパラダイスとか大好きな北野作品は何度も観ています。それこそどれも10回以上観ているように思います。だけど思い出したように年1回くらいで観ているだけで、今回のように駆り立てられるように繰り返しみるということはありませんでした。
『君の名は』 を立て続けに3回も観たのはぼく的にもとても稀なことで、なにがそこまでぼくを衝動を駆り立てたのかとても気になってしまいました(もちろん飛行機の中での鑑賞ですからコストというハードルがとれているので一般視聴者とは多少モチベーションが違うかも知れません)。
なにがそんなに涙腺を刺激したか
バッハが好んで使っていた構造主義的時間展開がみごとに取り込まれてたのがその理由であるとぼくは解釈しています。
時系列としての文脈を分脈して、分凝して、さらにそれを交錯させながらリフレインさせる。そうした複雑なコンパイリングの結果として作品をまとめる。なんかアメリカ連続ドラマのパーソンオブインタレストでハロルド・フィンチがガラスのボードに写真や新聞の切り抜きやらを貼り付けて、そうした点と点を線でつなぎながら解明していくやりかた、松本清張っぽいやりかたによって、ラブロマンスにスペクタクルというかサスペンスの香りを上手に盛り込んでいるのかいちばんの理由であろうと。
脳生理的に言い換えるなら、記憶の鍵となる 「ロングタームポテンシェーション (LTP)」の尺で時間を区切り(分脈し)、光や衝撃音を伴う映像はその都度音楽や効果音をミスマッチさせ感覚統合を部分的にしかおこさせず、記憶をあいまいにさせて論理的記憶を遮り、感覚統合のパターンをそのつど切り替えて情動的記憶化の断片化を複数もりこみつつ。最終的にそれの統合を90分でまとめる。レム睡眠と記憶と覚醒を忘却曲線のなかにすっぽりおさめた、そんな感じに思えたからです。
音楽における構造主義を、映像においてみごとに完成させた点がこの『君の名は』という作品が、中毒のようにまた観たくなる効果を生み出すことに成功した理由であるように考えています。
繰り返しになりますが、90秒と90分という尺の中で巧みに1/fゆらぎが取り込まれたことがその成功の理由だと思ったのです。新海監督作品ならではの「風景が動く」効果は視覚と聴覚のミスマッチやアニメが醸し出す嘘っぽさをみごとに払拭し、ベストカプリングとして絶妙なるマリアージュとなり、「また観たい!」という効果を生み出したのだろうと。
わりとインターナショナルな展開も好感度アップの原因か
作品的のまとめ方は、いわゆる日本風ではありませんでした。そして父になるみたな含みもなければブラザーみたいに監督からさいごは背中を突き飛ばされてしまうような感覚はどこにもありませんでした。
ディズニー風のというかアメリカンなじつにハッピーエンドなまとまり方をしていたことは、(ある意味ではぼくに馴染めないところでしたが ) これからも世界的に大成功していくための定席でありそれ故のこの世界的評価かと。ジブリの作品にも共通する湿っぽさがない点は、これまでの新海監督作品と比較しても大きな変化、おおきく踏み出した感があって作品としてとてもとても好感を持てました。
ポスト宮崎は間違いなし
いまアニメが面白い、感動で涙するほど面白い。
彼の作品が計算されたものであるなら、再現性のある方程式でこれが作られていたのなら、まさしく新海さんはポスト宮崎であると、そして真のポストディズニーである。
大いに期待しようと書きながら4度目の(T_T)でした。
スバルファン的にはインプレッサのカーオブザイヤーで喜んでいるこの頃ですが今回の新海作品も「本家日本のアニメここにあり!」という感じでとってもバンザイな気分です(・・||||rパンパンッ
では、また・・・(*^。^*)