高齢者に対する音韻再獲得トレーニングはどうあるべきか
先日は、visual-speech audiometoryとかスピーチテイクの話題で集まったみなさんと盛り上がった。方法論についての理解に齟齬はなかったが、その目的というかアウトカムに関する考え方はひとそれぞれで乖離があるように感じた。
そこで、いわゆる溝の口方式なるものを整理しつつ、聴覚リハビリとはなんぞやということについてすこし考察してみることにした。
- 聴覚コミュニケーションにおいては、聴覚だけでなく視覚情報も活用している。
- 音韻カテゴリーは「三つ子の魂」、スピーチバナナはあくまでも平均的な目安。
- 難聴とは、50音の識別においてそれが40とか35とか減ることを意味している。
- 単音節まではボトムアップ、2音節以上はトップダウンで処理している。
- 語頭の音素を間違えなければ単語理解はトップダウンでなんとかなる。
- 難聴者の音韻マップを理解するためには、その人の発話を見ることが大事。
- ひとは聞こえる音しか声に出せない。
- ひとは聞こえない音は無遠慮に発する(舌打ち、咀嚼音など)。
- そもそもひとの音素数は、40〜80個くらいしかない。
- 生まれたときには800音素でも3歳頃には40〜80に収束する。
- 音素が少ないことは冗長性が高いことを意味する。
- 冗長性の高さと語彙数とでコミュニケーションが成立する。
最初にまずぼくが推奨しているやりかたを説明する。
1)聴力レベルを測る。できれば、1500とか3000とかも細かく。
2)可能なら16000Hzまで測る。
3)語音明瞭度を測る(57S)
4)不快レベルあるいは快レベルの評価
オージオグラム上に聞き取れた音素をスピーチバナナを参考に上書きすることで、オージオグラムの結果と聞き取れる音素の結果の一致不一致を確認する。
オージオグラムからは聞き取れそうもないのに、語音検査で聞き取れている音素があるときは、
①FLの適応かも知れない。
②非常に勘のいい人で今回だけいい結果が出ているのかも知れない。
を考えながら次にすすむことになる。
以下の聴覚認知バランサーを使えば語頭音の語音検査結果が自動的にオージオグラムにマッピングされた形で知ることができる。
5)聞こえない音は発声できない。聞こえない音は無意識に発している。
飲んだり食べたりするときに発する咀嚼音は、もちろんお行儀の悪いことなので上品な人なら相当に意識していて発することはない。いっぽうでがさつなひとはお構いなしだ。人柄を見極めてということになるが、飲んだり食べたりするときに発する咀嚼音はそれがきこえると途端に発しなくなるものだ。試聴の段階で即座に確認出来る反応と言える。カウンセリング時に、ガムとか飴とか飲み物を饗しながら、試聴器の試聴へと移行するとき即座にその飲んだり食べたりするときに発する咀嚼音が消えることがある。この状況は是非とも録音して欲しい。そのあまりの変化を目の当たりにすると、およそおおくの上品なクライアントさんは即座に補聴器を手に入れるという高いモチベーションをもつこと疑いなしだからだ。
そして聞こえない音をしるための聴力レベル検査以外の手段として朗読させるというのがある。
朗読音声を録音してスペアナすることでそれは容易に確認出来る。
Liteの無料版ではすこし役立たずなのでここは奮発して欲しい。
検査環境の確認は是非ともこれくらいで調べて欲しい。
リオンのNL-62とは誤差2dBくらいなのでこれで充分だと思います。
ここから先の実践の話しは、noteにて・・・