こちら難聴・耳鳴り外来です!

きこえ、コミュニケーション、そして認知や学習などについて”聴覚評論家 中川雅文" が持論・自説を思うままにつづっています。ときどき脱線しますがご勘弁を(^^;

書くことはキーボード打つよりも大事だと実感・・・

 大学生になったとき、お隣のお宅の鹿野先生からお祝いの万年筆をもらった。慈恵医大出身の先生で、自分が一浪して国立に行くべきか現役で私立に行くべきかで親とボクとで意見が対立していたときに中に入ってくださった方だ(もちろん現役で入学することになった)。

そのときのお祝いに頂いたのが、モンブランの万年筆とポールペンのセットだった。ペン先がEFと細く太字好みのボクは使いこなせないでいた。ボールペンは太字だったので使っていたが、当時のパイロットの攻勢にモンブランが奇抜なモダンデザインに手を出したときのモデルだった。そのせいかボールペンのリフィルは医者になった頃にはもう生産終了となってしまった。そんなわけで頂いた万年筆とボールペンは引き出しの肥やしとなっていた。

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 昨年の暮れ、娘がなにやらせっせとはがきになんとも言えない筆致の絵や文字やらを年賀状に盛り込んでいる姿を目にした。筆ペンでもないし、万年筆ともちがう。不思議なタッチのその筆記具に目が奪われた。ぺんてる・プラマンとよばれるその筆記具は、万年筆を使い慣れていない方にはとても親切な作りになっている。天地逆でも多少ななめってもとりあえずはインクが紙の上に降りてくる。だからまるでカリグラフィーペンの仕事のように実に表情豊かな表現をなんの訓練も馴れもなしにすることができる。わたしも「今年の年賀状はこれだ!」とプラマンを手に入れんと、最寄りの書店兼文具店なるTUTAYAに足を運んだ。しかしあいにくそこにプラマンはなかった(>_<)

 日を改め、こんどはイオンモールに足を伸ばした。そこでもプラペンを探すのに苦労した(結局、あまりに広い売り場をウィンドーショッピングしているうちに疲れてしまった。売り場が広いのは考えものだ)。モール内のイオンスタイルショップ、未来堂、TUTAYAと3カ所にも文具店が展開されていると正直そこをひとつひとつ見て歩くのはつらいモノがある。海浜幕張から徒歩でモールまで往復するとあっという間に12000歩は行くくらいだからあっという間に胸のアラームがピコーンピコーンとなってしまう。お茶休憩ばかりでいっこうにらちがあかない。

それでもなんとか、カラフルでカジュアルで廉価な万年筆を見つけることができた。しかし、パイロット・カクノというはペン先は細いのしか在庫がない。しばし逡巡し、ふと向こう側に目をやると今度はプレラが目に止まった。スケルトンのボディのその格安(?)万年筆はその美しい姿でボクを魅了した。このスケルトンボディに好きな色のインクを入れて自在に書く。そんなセルフイメージがわき上がり、その時そこにあったもっとも太字がかけるという店員の触れ込みを信じて、CM(カリグフィ)というスチールニブのクリア・スケルトンのプレラを手に入れることにした。

 カリグラフィーのペン先ならインクは濃淡の表情が欲しい。そう思ったら、私の足はふたたびTUTAYAの文具売り場に向かった。そこには、irozukushiの全色が試し書きできる場所が供されているからだ。そこでいくつかの青系や黒系の色を楽しみながら、最終的には「竹炭(たけすみ)」と呼ばれるほのかに墨汁のようなグレースケール感を醸し出すインクを使うことに決めた。

 しばらく、かれこれ3ヶ月は、そのカリグラフィーペンでご機嫌だった。きれいな日本語を書くためのペン習字練習帳を手に入れて、楷書のなぞり書きなどを楽しんだ。ペン習字を始めたとたんにまず気がついたのは、ずいぶんと漢字を忘れてしまっている。自己流に簡略化して、中国簡字ではなくて中川簡字になってしまっていることに気がついた。そうした理由もあってかペン習字練習帳はあっという間に私の万年筆文字で埋め尽くされた。

そんな万年筆選びにいそしんでいるうちに、私の5年越しの構想からなんとか書き終えた「耳と脳」が俎上された。なぜに万年筆にこだわったかというと実はこの本の出版が控えていたからだ。

 

耳と脳 臨床聴覚コミュニケーション学試論

耳と脳 臨床聴覚コミュニケーション学試論

 

 

あるとき、「多田先生が書いていたようなあんな太字の万年筆で、購入くださったヒトにサインしてあげたいな。」と多田先生の名著「免疫の意味論」のサインをみて思ったからだ。彼のサインに目が奪われたのは富雄の雄の字のつくり「隹(ふるとり)」を彡と略したようにさらりと書いてあった。雅文の雅もそんなサインで書きたいと思ったのだ。そこで多田先生のサインを分析。この太さならB(太字)かBB(極太字)だろうと深読みして、値頃感もありカスタマーコメントの評点も悪くない。パイロット・カスタム74黒軸(BB)を手に入れることにした。

 BBというその太さは申し分ない。正直細かい文字は書けない。だからA6文庫サイズの手帳には、BB文字だとせいぜい7行くらい。つめて書いてしまうと文字の太さゆえに文字は潰れて漢字は■みたいになってしまいあとから識別することもできない。だけどインクフローは尋常じゃない。あまりにたっぷりだ。そしてなによりもほとんど紙に触れているという感覚が持ち手にキックバックしない。筆先が墨の中を泳いでいるようななめらかさだ。書籍も立ち上がりの売れ行きの良い時期を過ぎたせいか、今はサインする場面がない。そんな理由からBBニブの黒軸カスタム74はいま白衣のポケットに収まっている。もっぱら患者さんへ説明する図表の作画につかっている。もちろん患者さんがボクの書籍を買ってサインをせがんでくることもしばしばだから一石二鳥だ。14gの本体の重さは、軽るすぎる。これはひとつの課題である。カートリッジをポンプ式のCON-70 というコンバーターに換装すると手の中での収まりはいっきによくなる。コンバーターの重さが適度な重厚感を感じさせてくれる。漆とか金属軸とかいろいろな意見があるようだが、コンバータを使うなら樹脂軸であっても書き味は問題とならないとボクは思う。

こうやって書き連ねているうちにそういえばずいぶん前からパーカーの5thを持っていたことを思い出した。インクの色はkuroとBlueとそして並行輸入品のバーガンディーしか選べない。コンバーターをつかっていろんなメーカーを楽しむことはできない。その制かどうかは知らないが、使っているうちにその純正の色がなんだか安物のサインペンみたいに思えてきて好きになれなくなった。そしてそのまま引き出しの肥やしになっていた。だけど万年筆で書くようになって改めてパーカー5Thで書いてみるとその書き味が面白いほどに万年筆に似せてあることがわかった。これはこれでありだと思う。だけどこれとプラマンを比べてしまうときっとプラマンを選んでしまいそうだ。だってパーカーのリフィル1本の値段でプラマンなら3本ぐらいは買えてしまう。それでも水生のこうした高級ペンは必要だと思う。

 

机の上に縦置きしたキャップが転がって床に落ちたり、お尻に刺したキャップがぽろりと落っこちたりとここ最近は夏ばてのせいか手元があやしかった。そんなことが理由ではないが最近また新しいペンを手に入れた。つや消しのマットブラックボディあることとペン先が18kであるということ、そしてキャップしきでないということが私の買い物する脳にスイッチを入れたのだ。それはやはりパイロットの万年筆だった。

キャップレスと言われるこのパイロット万年筆のシリーズはもう50年以上前から売られているパイロットのオリジナル製品らしい。わたしのその中でももっとも地味なノック式のマットブラックというのみ惚れしたのだ。

 

 

インクは、山栗とした。少しばかり茶の色がかくれ見えする黒いインクというイメージ。プライベートな内容の記載はこれに決まり。 

 

 かくして一通りのラインナップをそろえることができた(*^_^*)

 

PS

そういえば採点用の赤ペンは、いつもパイロットの純正のRedを使っていましたが、ここに来て朱のかかった冬柿に変更しました。

 

万年筆カスタム74 透明軸 中字(M) FKK-1MR-NCM

万年筆カスタム74 透明軸 中字(M) FKK-1MR-NCM

 

 

 ps2

キャップレスのインクを変えているとき、不用意にインク瓶を倒してしまいそうになった。すんでの所でセーフだったが、その時に中学生時代の自分の姿がフラッシュバックした。自分はすくなくとも40年ほど前に製薬メーカーのプロパーさんからキャップレスをもらっていてことを思い出した。そのペンはその当時の自分の扱いが悪くて、インク交換の際に思わず床に落としてしまい壊してしまった。そのことを突然思い出したのだ。