こちら難聴・耳鳴り外来です!

きこえ、コミュニケーション、そして認知や学習などについて”聴覚評論家 中川雅文" が持論・自説を思うままにつづっています。ときどき脱線しますがご勘弁を(^^;

Somatosensory Tinnitus (SST)という概念。

6月7日から10日の間、米国ミシガン州アナーバーで開催された第9回TRIミーティングに参加した。ダラス、バファロー、ブルージュバレンシア、オークランドとこれまでに6回毎年参加してきた。

2002年 Pittsburgh大学からDallas大学に移った神経性理学者Moller先生の唱える「不適切な神経可塑性の発現による耳鳴」という概念を皮切りにこの数年間、耳鳴の研究は基礎も臨床も実に大きく前進した。

今回の収穫は3つ。

①耳鳴患者のABRはIII波の電位が高くなる。それはDCNへの入力が減り相対的にSOCの入力が増えるから。

②三叉神経由来の求心性インパルスは、蝸牛由来の求心性インパルスと容易に相互干渉し合う。その部位はDCNレベルである。

③三叉神経第II枝ブロックは、Somatosensory Tinnitusに著こうする。

というものであった。

西欧の先生方がなぜかまるで鍼灸学でも始めたかのようにトリガーポイントを語り、神経ブロックだけでなく、ドライニードルアスピレーションという治療も有用だと言い始めていた(これって中国の針治療と何が違うのかな?)。マッサージや針やブロックやらと何でもありな様相だけど、基本彼らは、「Somatosensory Tinnitus」にしか効かないという申し開きはしていた。

ところがどうもこのSomatosensory Tinnitusの診断基準がすっきりしない。犯人は三叉神経由来と筋膜由来の2つらしいのだが、その判断が単純頸椎レントゲンとトリガーポイントの有無だけでおこない。その後に上述したような治療をすると耳鳴が止まればそれはSomatosensory Tinnitusだという話しらしい。

耳鳴はいよいよ耳疾患から体性感覚疾患にかわってしまう気配だ。