こちら難聴・耳鳴り外来です!

きこえ、コミュニケーション、そして認知や学習などについて”聴覚評論家 中川雅文" が持論・自説を思うままにつづっています。ときどき脱線しますがご勘弁を(^^;

備忘録

WHOは、 Safe Listeningというキャンペーンを通じて、 難聴人口の急増へ警鐘をならしている 2016年3月3日にはアナウンスメントも出されている。

補聴器の市場調査でも同様に若年層の難聴増加が問題となっている。

日本での市場調査の結果は、ジャパントラック2012 にくわしい。

これによると15から24歳で倍増していることがわかる。
先進国は、いま難聴問題が高齢者だけの問題ではなくなっている。

高齢者の難聴人口の割合(軽度難聴以上)は、65-75歳25%、75-85歳50%、85歳以上ほぼ100%と言われている。日本の高齢者難聴の増加は、長寿化(疾病のある老人の割合が、保険制度の充実していない国よりも多い。医療情勢の悪い国ほど高齢者は健康なのはサバイバル効果)による人口分布のトリックで、世代補正するとわが国が特に多いと言うことではない。

http://www.who.int/pbd/deafness/activities/MLS_Brochure_English_lowres_for_web.pdf

http://www.hochouki.com/files/JAPAN_Trak_2012_report.pdf

 

2015も出ていました汗

http://www.hochouki.com/files/JAPAN_Trak_2015_reportv3.pdf

 


WHOは、器機からの出力レベルを95dB以下にすることを提唱しているようだ。

WHOの見解を受けてわが国でも 情報通信技術委員会で取り組みが始まっている。

http://www.ttc.or.jp



曝露許容時間は以下のように提唱されはじめた。
ヘアドライヤー 15分

イヤホン  59分未満
芝刈り機、耕運機 2時間半
自動車の運転 8時間

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今後こうしたデバイスに改良が加えられれば、ノイズの強大な音圧が減り、許容時間も延びてくることだろう

難聴が起こるメカニズムは、

  • 生活の中に潜む騒音やノイズでも騒音性難聴が生じる。
  • 大きな音ほど傷害能力が大きく、大きいほど高い周波数領域の有毛細胞を壊す。
  • 有毛細胞は一定時間・一定レベル以上の音響刺激で疲弊し死滅する。
  • 末梢内耳に反応しない有毛細胞が生じると、トノトピックに対応している脳領域には反応が届かなくなる。
  • 使われない脳領域は、老廃物が溜まり機能的な廃用に至るか、他の五感の代替ニューロンの役割が分担させられる。
  • トノトピックな障害は不感領域を生み出すわけだが、不感領域の近傍の感領域が代わりに反応する場合もある。音韻情報に歪みが生じるから,錯聴が生じるあるいは、視覚情報の上書きが生じ、よく使う似たことばに反応してしまうようになる。  空耳、聞き間違い
  • 脳血流は、大きな筋の等尺リズム運動あるいは脳の活度の増加によって上昇する。
  • 使われないニューロンの一群は血流が途絶え、さらには隣接する不感領域まで巻き込んで脳血流を低下させる。
  •  ニューロンの老廃物であるタウとアミロイドは、神経⇒間質と移動し、血管の脈動によって盲脊髄液へと排出される。
  • 老廃物のたまりは、脳活動の低下あるいは筋等尺運動の不足と言い換えることができる。
  • この老廃物のたまりが、脳活動の低下の原因。聴覚認知障害や軽度認知症の始まりと言えるかも知れない?
  • 老廃物はアルツハイマー病と共通している。
  • 認知症は、抑うつ、難聴、嗅覚記憶の減退などが特徴的な所見。
  • 高齢者における難聴は認知機能障害のごく初期の症状であるリスクがあると考える必要があると考えている。



耳鳴患者や難聴者の聴覚皮質に老廃物がたまっていることがわかってきた。
耳鳴もまた認知機能障害の初期症状として捉えるべきである。
認知機能障害の初期症状である抑うつ傾向は、耳鳴でもしばしば認められる。
この領域についてはさらなる研究が進むことを期待している。
有毛細胞を壊さないためには耳を守るしかない。

1日の音暴露時間をどれくらいにとどめるかを計算することは原則であるが、

紫外線から肌や眼を日焼け止めやサングラスで保護するように、予測できない騒音やノイスに対しても耳栓をつかった保護をするのもよいだろう。

騒音から耳を守りつつ人の会話はきこえる耳せん(例:ヒアディフェンダー(株)名優)や

 

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さまざまなタイプの耳保護具がすでに市場には供給されている。

仮に、保護できずに強大音に曝されてしまったら、耳を休ませることが大事だ。糖摂取を控え、水分をたくさん取り、適度に体を動かしつつ、耳を閾値レベル程度の環境に2日間置くことで健康な有毛細胞なら自己修復できる可能性がある。もちろん、ひどい耳鳴やきこえの低下を自覚するような場面では、自己判断せず耳鼻咽喉科医に相談して欲しい。


老廃物を溜めないためには、脳神経を活動させるが脳血流を高めるしかない。
脳の音の領域を活動させるためには、サウンドリッチな生活を送るのがいちばんいい。
ハイレゾの音源で音楽を楽しむことはその意味で意義が高いといえるだろう。

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ハイレゾならこれです(*^_^*)


老廃物は血管間隙にたまりそのたまりは血管の脈動で外部に運び出される。大きな筋肉のリズム運動つまりウォーキングなどの有酸素運動を欠かさないことが脳血流の維持には大事である。
じっと同じ姿勢で5時間以上もいるのはとても危険なことと言える。動くことは脳血流の改善の要なのである。

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ボクの愛用のウォーキングシューズ。軽くて蒸れない(*^_^*)。

脳神経系にはある特徴的なふるまいがある。よく使われる神経系は、周囲の神経系も巻き込んでその働きを高めていく神経可塑性の発現という働きのことだ。
そのおかげで練習するほどにわれわれはあらゆる機能の巧緻性を高めることができる。
ところが困ったことに、あまり使われてない系では逆の働きを示してしまう。そう、使われないところはよく使わうところに取り込まれてしまうことを意味する。
良い友達に囲まれていると自分も高まるが、悪い連中と一緒だと知らず知らずに染まってしまうみたいに。


音を神経インパルスに変えて聴覚皮質にそのインパルスを送る最初の場所が有毛細胞である。
有毛細胞は、大きな音で壊れると先ほどはなしたが
ノーミュージック、ノーライフということばがあるが、

耳鼻科医としてはあえて

「補聴器がなければ、人生なんて・・・」


聞こえる耳を手に入れて、もっと人生を謳歌してほしいというメッセージを送りたい。


追補:
*近視の人は、0.7でメガネをかける

*難聴の人は、50dBでもまだ補聴器をつけない人がいる。50dBは健聴者(10dB)の100倍悪い。つまり視力の0.01くらい。聴覚認知の冗長性(あいまいでも判断できる寛容性)があだとなって、眼鏡にくらべ、補聴器の装用開始時期は大幅に遅くなっている。
*装用の遅れが、耳と脳のの接続を弱め、例えば慢性の痛みやしびれなどの神経系との接続を生み出してしまい(不適切な神経可塑性の発現)、体性耳鳴(しびれを耳鳴を勘違いしてしまう。むち打ち後の2週間後、首が痛くなくなると耳鳴。腰の脊柱管狭窄症で発症1〜2年後に耳鳴など)を生み出しやすくなる。高齢者はなにがしかのしひれや痛みがある。運動器由来の正しい神経経路が活性されない(運動不足)であると、耳鳴に化けやすい。