こちら難聴・耳鳴り外来です!

きこえ、コミュニケーション、そして認知や学習などについて”聴覚評論家 中川雅文" が持論・自説を思うままにつづっています。ときどき脱線しますがご勘弁を(^^;

KYな耳の人たち

こんにちは なかがわ です(*^_^*)

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KYな耳を持つ人のことについてすこしだけ・・・

空気が読めない人のことをKYな人といったりするのは皆さんもご存知だと思います。

言外の意味を汲み取れない人たちは、果たして個性的なのかそれともどこに問題があるのでしょうか?

 

KYな耳をもつ人のことを考えるときわれわれは聴覚情報処理障がいな人たちのことを思い浮かべます。イントネーションやアクセントやリズム感のわからない耳を持っている人たちのことです。

聴覚情報処理障がいは、第三の難聴としてここ最近注目を浴び始めた新型の難聴のことをいいます。何が新型かというと外耳や中耳の障害によって生じる「伝音難聴」や蝸牛のはたらきのエラーで生じる「感音難聴」とは異なる責任病巣をもつ病態の難聴だからです。

例えばこんなKYさがそうした人たちの特徴です。

「音は聞こえるけどその意味が分からない。」

「ことば通りの意味は分かるけどそのことばの真意がわからない」

といった音声情報に含まれる隠喩や情意を理解できないといった症状や・・・

 きれいに化粧した女性に向かって「みずっぽいね」といえば、それは水商売の女性のようなという意味に捉えて欲しいのですがただ単にうすまっている感じにうけとめられたりするのもそれでしょう。

そんな事例を出してしまうと「それって語彙力とか経験知の話じゃないですか?」と切り返されそうですが、聴覚情報処理障がいな人はその違いを学ぶ力が欠けているために教えても身に付かないのです。

「ほんまでっか(? 語尾上がり)」なのか「ほんまでっか(。フラットなアクセントの体言止め)」なのかで「疑問?」か「同意」かという風に意味そのものも変わってしまいます。「うっそー」と「うそ(`へ´)フンッ」ではおなじうそでもうそ加減はおおちがいです。でもKYな人はその違いをタイミングよく理解することができない。そのために聴覚コミュニケーションにおいて様々な問題を抱えてしまうのです。

 

KYは脳のどこに問題があるのでしょうか?その答えを見つけたのが米国の脳研究者 ラマチャンドラン博士です。彼は脳損傷後にKYになった患者さんの大脳皮質をつぶさに調べ、側頭葉にある聴覚皮質のやや後ろにある角回が損傷されるとそうした問題、つまり文面通り理解できてもそのことばの裏にある隠喩の二重性を理解することができなくなることを明らかにしたのです。

そうした脳研究の知見からそれまで漠然とした概念でしか語られなかった聴覚情報処理障がいも注目されるようになったのです。

 

ことばの持つリズムやアクセントやイントネーションがくみ取れないこの障がいは、日常におけるコミュニケーションに多大なる問題をを引き起こします。アクセントやイントネーションといった音韻遷移パターンの認知は実は角回よりも縁上回と呼ばれる角回近傍の皮質が重要な役割をしていることもわかってきました。

リズムやアクセントやイントネーションは、実は聴覚だけでなく触覚でも活用しています。聴覚に障がいのあることがおおい発達障がいな子供たちはそのために聴覚コミュニケーションがうまくとれません。一方で触覚でならなんとか利用できるので過剰なスキンシップという形の行動で情意的なコミュニケーションをとろうとします。なんとか補うとするばかりに相手に対して過剰なまでの、半ば暴力的とも思えるふれあい行動をとってしまう場合もあるのです。聴覚ではなく触覚で聴覚並みなダイナミックレンジでコミュニケーションをとっているんですね。

 角回や縁上回などが損傷されているならMRIなどであきらかにすることができますが、発達の過程におけるニューラルネットワークが組織化かされるときのエラーだとなかなかそうした問題の存在をはっきりさせることはできません。NIRSやfMRIと言った特殊な脳機能解析装置ならその活動を観察できますがまだまだ研究のレベルで一般的ではありません。


では皆さん ごきげんよう^o^

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 註  読みは異なりますが、表記の違いは、それぞれに、障害=疾病、障がい=個性 と言う意味合いで使われます。