こちら難聴・耳鳴り外来です!

きこえ、コミュニケーション、そして認知や学習などについて”聴覚評論家 中川雅文" が持論・自説を思うままにつづっています。ときどき脱線しますがご勘弁を(^^;

耳鳴りタイプ3について 〜内服している薬剤の副作用による耳鳴〜

これまで難聴に伴う耳鳴、体性感覚(しびれ、痛み)にともなう耳鳴についてお話しさせていただきました。

で、今回は、少し毛並みの違う「内服している薬剤の副作用による耳鳴」について解説したいと思います。

内服している薬剤の副作用による耳鳴には、大きく2つがあります。ひとつは脈動のリズム変化を耳鳴として自覚するタイプ、もうひとつは血液の粘性の変化による血管雑音の音色の変化として自覚するタイプです。

わたしたちはだれでも無響室とか防音室のようにとても静かな空間に身を置くと耳鳴りを自覚することができます。極論を言えば、耳鳴りは誰でもある正常な生理的反応です。車のアイドリングの音みたいなもので、高速道路を走り続け、サービスエリアに到着、さあトイレに買いものにと車を降りるときうっかりエンジンを切るのを忘れた経験、みなさんいちどはあると思いますが、高速走行のうるさいエンジン音を無視するモードに入った脳は、サービスエリアでの下車の時でもそんなふうに機能しているので、アイドリングの音を無視してしまう。それが理由でアイドリングの音が聞こえなくなるのです。

おなじようにわたしたちの体も心臓はいつも不断に動いています。そして血管を血液がたゆみなく流れています。当然そこには拍動なり脈動なり血管を流れていく血液の音が存在しています。しかし、私たちの脳はそのリズムや音色がいつも通りの時には意識の下にそれをすっかり隠してしまっています。

高血圧や甲状腺疾患や更年期など疾病にともなう耳鳴というのもあるにはあるのですが、病気がゆっくり進んでいるときは変化もわずかなので拍動なり脈動なり血管を流れていく血液の音の変化には自然に順応してしまいます。血管性の雑音が意識の上にわき上がってくるのは、急速な変化と相場が決まっています。

耳鳴を引き越す代表的な薬剤としては、

などがあります。

高血圧の始まりは、のぼせや頭重といったよりひどい症状があるし、降圧剤を飲む理由もわかっているし、血圧の変動にばかり注意が向かうので耳鳴のことはあまり意識にのぼりません。高血圧のお薬を飲み始めて数ヶ月、順調に降圧に成功していると、人によっては食事療法や運動療法もおろそかになるひとが出てきます。生活の乱れからお薬のコントロールが不良になるとまた血圧が上がってきて脈動の音も大きくなります。「ざーざー」と脈打つ音がはっきり聞こえてくるようになります。ひとというのは自分勝手なもので、これは降圧のための努力を怠って生じた血管雑音にほかならないのですが、患者さんはきまって「血圧は治療しているので大丈夫。最近耳鳴を感じるのはきっと脳か耳の病気だと思う」と耳鼻科や神経内科にやってきます。高血圧の治療をはじめるときにお医者さんから、「脳心血管イベントの予防として飲み始めましょうね」とか暗示をかけられているので治療(内服)しているのに耳鳴がするのは、脳の病気に違いないと心配してしまうからにほかなりません。

同じようなことは不整脈でも起こります。不整脈は、心臓を動かす神経のネットワークにおける接続エラーから心臓全体でアンサンブルを奏でることができなくなった状態です。心臓のそれぞれのパートがばらばらに演奏している状態が不整脈。問題となる不整な動きのエリアの神経や筋肉を遮断(焼いて)して全体の調和をもたらすという根治的な治療もありますが、多くは抗不整脈薬というリズムを取るための調教薬を使うことがほとんどです。この抗不整脈薬はおよそ2年くらい継続していると、体が薬になれてきてしまい、効きが悪くなっていきます。そうした抗不整脈薬の効きの悪さはなぜか2年目くらいにあっという間にスイッチが入ったように効かなくなるケースがあります。そうした脈のリズムつまり音色の変化を耳鳴として自覚するケースがあります。こうしたケースは抗不整脈薬を変更するだけであっという間に耳鳴はきえてなくなりますから驚きです。

 

つづく・・・

 

 

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