相関と因果関係。
(本文と写真は関係ありません)
- 年を取ると耳が悪くなる。
- 難聴の原因は、騒音と高血圧である。
- 難聴の原因は、遺伝素因と薬剤性の内耳毒によるものと感染症がある
- 認知機能の低下している人は脳が萎縮している。
- 難聴のあるひとはうつ傾向がある。
- 難聴のあるひとは認知機能が悪い。
- 難聴のある老人男性はうつになりやすい。
しばしば観察される事象である。
経年変化による機能の劣化は
自己回復とか自己修復に対する対処がなされていないことで生じる。例えば、マバン族は高齢になっても難聴になるひとはいなかったし、日本にも数%のスーパー聴力高齢者がいる。なによりマバン族の部落に道路が開通した後は、マバン族にもメタボが生まれ、難聴も進むようになった。
高血圧は動脈硬化とリンクしているから体のすべての臓器の不調の原因である。運動不足や食塩の取り過ぎなどが原因とされているが家族性遺伝性もかなりの割合がある。
難聴が遺伝素因や内耳毒性のある薬剤の使用などで生じる。毒性があるとわかれば市場から駆逐されるが、新薬だとわかるまでに時間もかかるだからこれはなかなか回避しがたい。
脳の大きさと知能の問題は古くから議論されている。森満保先生のなぜこどもは勉強しないといけないのか 人工内耳からわかった耳と脳のはなし のなかでも脳容積のことがいろいろと書かれている。しかし、残念というかやっぱりというか、脳の大きさと知能には相関があるようにみえてもほとんど因果関係はないことがわかっている。すくなくともMRIで形態をみることでなにかを言い切ることはほとんど意味がない。脳の大きさと機能についての神経神話はいまだに広くはびこっていて医者でさえもそれを信じているのがいるからやっかいだ。
機能的MRIやPETで機能からみた脳地図と脳萎縮の程度には相関が見られるかも知れないが因果関係はないというのが現代神経科学の基本的な考え方である。
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難聴とうつあるいは難聴と認知機能という問題も同じように解釈が難しい。相関はありそうだが因果関係は云々できないというのが正しい考え方のように思う。難聴があれば会話が聞き間違えたり聞き取れずで日常的なストレスは高まる。それだけでもコミュニケーションエラーにともなう抑うつ気分になってしまうだろう。認知機能検査で使用されるMMSEなどの質問紙は基本的にきこえるヒトを対象に行っている検査だから難聴者にとっては不利な問題が少なくない。実際、最近の認知機能検査は、MMSEとかだけじゃなくてバーゼルインデックスとかやる気スコアでの評価もあわせて行うというスタイルになっている。難聴を放置すると認知機能がわるいとかうつ傾向があるという風に解釈されやすいから積極的に補聴器を活用してもっとみんなと濃いコミュニケーションとりましょうねというくらいならいえるとおもうが、補聴器で認知症を予防しようというのはすこし飛躍しすぎなように思う。
なんだかうつと認知症の予防手段のようなニュアンスでいっきに盛り上がっている感、満載であるけどもそれってどうよという感じをどうしても払拭できない。
トドメは難聴老人男性はうつになりやすいというもの。同じ調査が米国では女性がなりやすいに大幅に変わってしまった。こうした差異は、生活スタイルや文化あるいは食事などいろんなものの影響を受けている。
(つづく)