こちら難聴・耳鳴り外来です!

きこえ、コミュニケーション、そして認知や学習などについて”聴覚評論家 中川雅文" が持論・自説を思うままにつづっています。ときどき脱線しますがご勘弁を(^^;

耳鳴りについて タイプ2のこと

今日は、タイプ2の耳鳴りについてのお話( ^)o(^ )

前回、耳鳴りは大きく6つのタイプがあること、そのうちのひとつ難聴にともなう耳鳴のことをお話しした。で今回は,2番目の慢性疼痛にともなう耳鳴についてすこしばかり講釈する。

 

慢性疼痛にともなう耳鳴と言われても、「慢性?」「疼痛?」とさっぱりイメージがわかないかも知れない。そこで2例ほど症例提示してみる。

 

  • 症例1:OMさん 30歳男性 

【主訴】右の耳鳴 

【病歴】XX月14日頃から右耳鳴を自覚「キーン」となっている。めまいや肩こりも自覚している。近医から2週間前から、ロキソニン(痛み止め)とミオナール(筋緊張をほぐす薬)を処方されている。難聴の自覚なし。

【既往歴】2週間前に追突事故(エアバック開くほどではなかった)が、あたりどころがわるかったのかむち打ち症状があったので整形を受診している。

  • 症例2:SSさん  70歳女性

【主訴】両耳鳴

【病歴】数年前から脊柱管狭窄症(腰)で整形外科に通院中。ロキソニンを飲んでいた時期もあったが、今はリリカ(中枢性の疼痛軽減薬)を飲んでいる。最近、耳鳴が徐々に強くなってきた。

 

痛みやしびれを脳に伝える電気的なシグナルは神経によって脳まで伝達され、脳で認知したときに痛みに変わる。痛みの部位のレベルの知覚神経は、脊髄を経由し、脳幹、そして視床、最後に皮質へとその痛みの情報を上行させている。痛みのシグナルは脳幹では背外側のエリアを通るがその部位は内耳で受容した音のシグナルを脳に伝える中継点でもある。

求心性(脳に向かう)シグナルは、それが繰りかえし、かつ持続的であるときは、そのシグナルをより早くよりより強く、つまり減衰しないで脳に届くようにする仕組みが備わっている。こうした神経の仕組み「神経可塑性」によってわれわれは学習というニューラルネットワークを強固にしている。しかし、こうした可塑性による学習強化は、不都合な形で生じることもある。つまり、慢性の痛みや鋭い痛みはより強固に上行するようになるのである。

神経繊維は、電線のリードのようにしかと絶縁されているわけではない。より早くよりより強く(減衰しない)シグナルは周囲の神経活動にも干渉してしまう。干渉された神経はそこでまたさらに反応性(感受性)を高めてしまう。

首や腰や膝の痛みは、そんな学習プログラムの影響を受けて、容易に、神経の感作を生み出してしまう。痛みという病気が徐々になるよりも痛みだけが延々と長引いてしまい、でもお医者さんからはもう問題ないといわれてしまうのは、痛みのシグナルだけを特化して脳に伝えてしまう回路を自分自身がつくってしまったからにほかならない。

痛み止めを飲んでいると、末梢からの痛みシグナルは脳に向かっているけども、脳はそれを痛みとして認識しない、すると脳は気を利かせて、その痛みのシグナルの存在をきちんと脳に伝えたいと考えて、その痛みのシグナルと脳幹という場所で音という情報に変えてしまう。

こうした痛みのシグナルが耳鳴に変わるタイプを体性耳鳴とよぶ。

首の痛みなら2週間、腰なら1〜2年、膝なら2年以降というふうにのうからの距離で発症するタイミングが変わる。痛くてもしっかりリハビリして動かしているひとはなりにくい。

体性耳鳴の治療は、運動リハビリがいちばんなのだ。

 

もちろん医学的なアアプローチもあるが、そうした治療(神経ブロックや経皮的針刺激法(GSS))は、その治療効果はいわれているが、まだ十分なエビデンスが得られいるほどにはいたっていない。