こちら難聴・耳鳴り外来です!

きこえ、コミュニケーション、そして認知や学習などについて”聴覚評論家 中川雅文" が持論・自説を思うままにつづっています。ときどき脱線しますがご勘弁を(^^;

回想 脳のフロンティア

1990年、川崎サイエンスパーク内のインキュベーション企業 ゆらぎ研究所/脳機能研究所の研究員となった。

その時に薦められたのがこの本だ。

f:id:neruo:20160421084846j:plain

 
1980年に始まった 脳の世紀 プロジェクトという国家的な研究分野の先頭を走っていた研究所の所長 武者利光先生の書棚にあった本のひとつだ。
当時は、養老孟司唯脳論やDNA研究のクリックが得た資金を脳研究につぎ込み始めたとかドンキャンベルがモーツァルト効果とゆらぎの話をしたりと神経科学からニューサイエンスとしての脳科学を産み落としたばかりの頃だった。
 
当時の研究所にはバングラデシュからやってきたシャハさんやパックさんという天才的な数学者やソ連崩壊で流れてきたロシア人研究者のヴォーバさんなど驚くほどユニークな人たちが研究所に集まって、地震震源推定ソフトを用いて てんかん発作の脳内の部位を推定するソフトの開発やファントムモデルとCT画像を用いて 頭皮 頭蓋骨 脳脊髄液の導電率をシミュレーションする研究などを行っていた。もちろん並行して 1/fゆらぎの扇風機や照明設備の開発研究やら音楽と1/fゆらぎの研究の延長から脳と音楽の研究まで行っていた。ロシア人の研究者たちは地下鉄サリン事件を契機にこの日本も安全な国ではないと米国に移った。バングラディシュからの研究者たちもアメリカへ行くことを画策していたようだったが、9.11のせいなのかカナダに移った。
日本に移ってくる人たちも、例えばソ連崩壊⇒日本だったが、天安門では 天安門⇒(日本)⇒アメリカとワンストップにかわった。9.11以降はアメリカへ移るのがすこしばかりやっかいになったせいか日本にやってきたガイジン研究者はカナダやスエーデンに移るのが目立つようになってきた。
地下鉄サリンや3.11は、日本人自身であっても日本脱出というシナリオを考えさせる状況を生み出している。
この20年でそうとうに流れが変わった。
 
さて1990年当時はまだまだバブルの時代だったせいか日本の企業は雲をつかむような1/fゆらぎ研究や脳機能推定研究という領域に多くの資金を供給してくれた。
ビールののどごしと酵母と炭酸度合とアルファ波なんていうテーマでも研究が成立したのは本当に幸せな時代だったように思う。実際、当時のソニーにはエスパー研究所もあったし、彼らは補聴器の開発にだって手を染めていた(その後、ソニー補聴器事業からは撤退したが20年以上たった今でもその音質を凌駕するような製品はどこの補聴器メーカーからも登場していない。というかこの20年、補聴器メーカーはM&Aに明け暮れてまともなことをやってこなかった。ぼくは茂木さんをESP研究所の残党ではないかと疑っている。)。

 

ゆらぎの世界―自然界の1/fゆらぎの不思議 (ブルーバックス 442)

ゆらぎの世界―自然界の1/fゆらぎの不思議 (ブルーバックス 442)

  • 作者: 武者利光
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1980/10
  • メディア: 新書

 

 

アマデウスの魔法の音 ~集中力~

アマデウスの魔法の音 ~集中力~

  • 作者: ドン・キャンベル,徳重のり子
  • 出版社/メーカー: アーティストハウス
  • 発売日: 2002/11/30
  • メディア: 単行本
  • 購入: 1人 クリック: 24回
  • この商品を含むブログを見る
 

 

 

アマデウスの魔法の音 発想力

アマデウスの魔法の音 発想力

 

 

 

アマデウスの魔法の音 集中力(ビジネス篇)

アマデウスの魔法の音 集中力(ビジネス篇)

  • 作者: ドンキャンベル,和合治久,Don Campbell,真田潤
  • 出版社/メーカー: アーティストハウスパブリッシャーズ
  • 発売日: 2004/06
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
 

 

 

アマデウスの魔法の音 快眠力

アマデウスの魔法の音 快眠力

 

 

 

アマデウスの魔法の音 免疫力

アマデウスの魔法の音 免疫力

 

 

 

アマデウスの魔法の音 美肌力

アマデウスの魔法の音 美肌力

  • 作者: ドンキャンベル,和合治久,Don Campbell,真田潤
  • 出版社/メーカー: アーティストハウスパブリッシャーズ
  • 発売日: 2003/05
  • メディア: 単行本
  • クリック: 3回
  • この商品を含むブログを見る
 

 

 

 

 

 

 

DNAに魂はあるか―驚異の仮説

DNAに魂はあるか―驚異の仮説

 

 

 

 

 こうやってドンキャンベルのその後を追っかけてみるとサイエンス誌のショートレターに論文が掲載されて以降はひたすら啓発書籍ばかりを出し続けていたことがわかる。

ストレスの発見者であるセリエ博士も一躍有名になるとその後はビジネスライクにたばこのストレス改善効果を研究していたことを考えると研究というものも常にその裏打ちとしてのビジネスがあることを悟らせてくれる。

はなしをもとに戻そう。

当時、文藝春秋という月刊誌が時代をたぶらかすニューサイエンティストというような趣旨の特集をんだことがある。その中には、しっかりと武者先生のお名前もあった。研究室入り口の応接間にはいつものように文藝春秋がおいてあった。その記事を武者先生がどのようなお気持ちで読まれたのかはわからないが、武者先生はいつもと変わらず自分の仕事を進めていらっしゃったことを覚えている。大学に所属する研究院として株式会社研究所に出向していた自分はそんな状況になにかそわそわしていたように思う。

そういえば武者先生が東工大を飛び出してベンチャー起こしたのは彼が55歳で東工大を定年してのことだったと記憶している。
 
当時の56歳とは起業するための年齢であったのだと自分が56を迎えなんだがすこし後ろ向きなマインドに覆い尽くされそうになってしまっていることがついてしまった。
いまさらながら武者先生のその軽やかさに頭が下がる。
そういえばことしも武者先生からは達筆の年賀状をいただいた。
 
1990年、ボクはせっせと溝の口のKSPまで愛車TDM850で日参し、脳と能の研究、脳とバイクの研究、脳と音の研究に明け暮れていた。
 
 追記

体が神経を支配する トロフィック理論 を著したデイル・パーペス博士は、シナプス結合に関する研究の第一人者であったが、このトンデモ理論によって脳研究者から追放(?)された。しかし、脳を真摯に研究する者はこのとんでもなくアンチテーゼな理論に目を通しておくべきだとこの本をボクに紹介してくれたのだといまでも思っている。

自分がなにかを正しいと思ってやり遂げようとしているときには、つねにその正反対の意見を言う人をそばに置いておけみたいな(^^;