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こちら難聴・耳鳴り外来です!

きこえ、コミュニケーション、そして認知や学習などについて”聴覚評論家 中川雅文" が持論・自説を思うままにつづっています。ときどき脱線しますがご勘弁を(^^;

脳の(構造において)男女差はない!? さてどうするSTさん?

WiredのNewsによると・・・
http://wired.jp/2015/11/05/male-female-brain-difference/

  • 海馬の大きさに男女差はない。
  • 脳梁の太さに男女差はない。
  • 言語処理において男女差はない。
という結論が出たと報じている。
順天堂の解剖学教授 新井先生が、解剖学的に見ると男性脳と女性脳があると発見?して30余年。
その後も多くの研究者によって、男女の脳梁の太さの違いを報告し、
  1. 女性は脳梁が太いから言語領域でも優れている。
  2. 海馬が大きいから女性は感情豊かで記憶もいい。
などと形態と機能を関連付けた学説がこの世の中を跋扈していた。
特にこの25年くらいの間に急速に進んだ
  • 女性の社会進出
  •  " 言語聴覚「医療」" の広がり
  • インクルージョン教育にともないASD児やADHD児と一緒に過ごす時間が増えたこと
などなどわれわれの環境は大きく変わっている。

昨日は日本臨床神経生理学会のレクチャーで加我牧子先生から言語発達障害の過去と未来みたいな感じの講演を聞いてきたばかりだった。そこでも脳梁説や海馬説の話がちりばめられながら、男児がいかに発達上の課題を抱えているかについてさらりと解説してくださっていた。もちろんテーマは難聴の診断と言語発達遅滞児との鑑別のための話で、海馬説も脳梁説も彼女にとっては引用データの一つに過ぎないが、そうした仮説があってはじめて臨床的なエビデンスが納得できるようなかたちにまとまっているのは疑いようもない。

美人だから冷たくて、附子だからやさしいなんていう話が デマか思い込みの類でしかないのと同じように、男児に自閉症や言語遅滞が多いとするのを脳梁の細さで説明してきたのがこれまでの流れであるが、それが違うとなるといったい原因はどこにあるというのだろうか?

  1. 遺伝子病としての自閉症や言語遅滞とする説
  2. 胎児期や新生児期の母子関係に起因するとする説
  3. 海馬や脳梁の形態ではなく機能の問題としてこれまでの説に固執する説
など学者によってその立場は変わるだろう。遺伝子はエピジェネティクスによって遺伝子はマーカーであって原因でないことがわかっているし、そもそも形質は遺伝しても性格は遺伝ではなく生活や文化で形成される後天的なものであることは疑いようもないからこれは論外として、
胎児期や母子関係に責任を押し付けるとこれまた社会的あるいは政治的イシューになりかねないから仮にそうしたエビデンスが出てきてもこの時代にそうした意見が繰り広げられることはありそうもない。

結局、「機能と形態は同じではない」と知り尽くしているはずの医学者や科学者は、引き続き、
「男女脳という概念が否定されたからといって、脳梁の形態に差がないことが明らかになっても、そしてそうした仮説に基づいて療育や治療が構築されていることからそうした手法の根幹が否定されたのかもしれない。しかし臨床的にはそうした手法で患者が救われているわけだから、これまで通り治療は同じように続けていく」みたいなすごく半端な回答になってしまうのかなと思う。

考えてみるに突発性難聴にはステロイドによる効果についてエビデンスがないとわかっているのに未だにステロイドは第一選択であるし、耳鳴治療に有効な薬物療法はないとのエビデンスが出ても未だにGinkoや蜂の子やらがはびこっているのと同じでいつも医学と医療は乖離している。