こちら難聴・耳鳴り外来です!

きこえ、コミュニケーション、そして認知や学習などについて”聴覚評論家 中川雅文" が持論・自説を思うままにつづっています。ときどき脱線しますがご勘弁を(^^;

サウンド・プアーからサウンド・リッチになろう!

耳鳴やてんかんはどちらも今までは脳の病気と考えられきました。

てんかんは側頭葉の一部に傷のようなものがあってそれが異常放電のフォーカスとなりその電気的な刺激が脳内に広がってしまうのが原因だからそこを切除しちゃえというのがてんかんに対する外科治療です。

耳鳴は難聴や不安神経症などで脳内のきこえの入力の不足が生じると、ほかの感覚刺激の神経インパルスが聴皮質にも流れ込んでしまい音もないのに音を知覚する現象として説明され、補聴器で聴覚入力を多くしたり、向精神薬などで脳の興奮をいさめるみたいな治療がおこなわれてきました。

一方で経験的には、耳鳴もてんかんも音楽を楽しむあるいは運動を積極的に行うヒトがとてもよいこともわかっていました。

てんかんのひとはテニスなど割合に激しい運動を好む人もいることから、骨へのインパクトによって生じるカルシウム代謝がてんかんには効果があると考える研究者もいて、骨がばしばしとしげきうけるとカルシウムが漏出しててんかんを防ぐなんて説まであったのです(カルシウムが不足するとイライラするのも同じかな)。

運動療法は負荷強度の強いものがよいのか50%程度が良いのかの議論は、最終的には軽度の負荷となる有酸素運動がよいだろうということで落ち着いています。ですからカルシウム補えば てんかんも治るし、耳鳴だって・・という話しではなかったようです。

(歴史的にみると、耳鳴治療はてんかん治療やうつ病治療をすこしだけ改良した方法で行われてきました。)

耳鳴については2013年にLANCETに掲載されたメタアナリシス研究からこれまで行われてきた治療法に対しては、音楽療法と心理療法と補聴器以外は意味がないという結論がでています。つまりアデノシン三リン酸やビタミンやginkoや亜鉛といった薬物は効果がはっきりしないし、TMSやVNSやDBSみたいな侵襲的あるいは外科的アプローチも推奨しないと臨床医はすべてに懐疑的であるべきだという結論がでたのです。

 

ぼくは、1)ウォーキング、2)ソマレゾン(ソマセプト)による経皮パッチ療法、3)耳サプリメントCDを用いた音楽療法、4)補聴器によるTRTなどを現場で実践しています。基本はだれでもいつでもどこでも非侵襲あるいは低侵襲でできるがそのコンセプトです。糖尿病や耐糖能異常で耳鳴が多いからまずはそうした問題のある方には運動による循環改善(肥満や高血糖の改善)をおすすめし、研究的な意味あいで経皮刺激による耳鳴のマスキング療法を行い、これまでの臨床経験から効果が確認出来ている1/fゆらぎ音楽による音楽療法もおこなっています(論文あり)、そしておおくの耳鼻科医が行っているように難聴による耳鳴は難聴の修正をまず行うという考え方を組み合わせで行っています。

 

最近になり、

1)てんかん発作に先行して心拍変動がある

2)耳鳴の65%は体性感覚の異常がそのい背景にある

ということがそれぞれの分野から矢継ぎ早に発表されました。

自律神経系の不調がそうした脳の過敏反応を引き起こすのだというこの新しい見解に研究者は注目し始めています。

体性感覚由来の耳鳴を唱える研究者は

1)経皮刺激(マッサージや針治療)の有用性

2)等尺運動の有用性(ウォーキング)

を唱えています。

考えてみるに音楽を聞くことだって、アブミ骨筋の等尺運動です。いわゆる1/fゆらぎ現象の研究を始めて20年、風前のともしびかと思われた1/fゆらぎ研究はここにきてがぜん注目すべきアプローチになってきています。

 

 

都会の病院で仕事するときは耳鳴患者さんが沢山いましたが、那須の田舎にはほとんどいない。ウォーキングすれば那須疏水のせせらぎ、鳥のさえずり、虫の声と実に豊かな音にあふれています。それに比べると、現代社会には自然のかなでる環境音があまりに不足しています。

アップルミュージックの普及とともに耳鳴患者が激減するなんとことがあるかなとひそかに期待していたりします(*^_^*)