こちら難聴・耳鳴り外来です!

きこえ、コミュニケーション、そして認知や学習などについて”聴覚評論家 中川雅文" が持論・自説を思うままにつづっています。ときどき脱線しますがご勘弁を(^^;

イヤホンはなぜ耳に悪いのか

こんいちは 聴覚評論家の なかがわ です(*^_^*)

きょうはイヤホンがなぜ耳に悪いのか についてです。

それではスタート!

 

音の伝わる経路

音の伝わる経路は3つあります。

  • 気導  (A)
  • 骨導 (B)
  • 耳介軟骨導 (C)

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 気導は経由して鼓膜を振動させることで聞き取っている音の成分です。20Hzから20000Hzくらいまでの空気の振動を音としてピックアップしています。

骨導もピックアップできる周波数は同じ帯域であると考えられていますが、それよりも低周波の振動や鼓膜では補足できない超音波も聞き取る力があることが最近の研究でわかってきました。しかし音で骨を振動させるには大きなネネルギーが必要です。気導よりも1000倍くらい大きなエネルギーの音でもないかぎり感じ取ることは難しいようです。

耳介軟骨伝導は最近明らかになった新しい音の経路です。1500Hz以下がメインの音色です。日本語のパスバンドは250〜1500Hz付近なので耳介軟骨導だけででも話声を聞き取ることができます。米語や英語のように2000〜6000Hz(メインが3500Hz)の音を使う言語圏の人には耳介軟骨導で繰り広げられる音は音声としてはクリアさの面ですこし物足りないものになるのかもしれません。こちらは気導の100倍くらいから捕捉できます。はっきりした声の大きさでの会話のときには、母音はいつものこの耳介軟骨導の影響を受けていることになります。

骨導と軟骨伝導は似て非なるもの。気導に対しての作用が全く異なります。骨導は気導より1000倍も大きな音でないと感じ取れないと説明しましたが、耳栓をするともっと小さな音でも聞き取れるようになります。一方で、耳介軟骨伝導の場合には耳を塞ぐと聞こえなくなるのです。耳介軟骨伝導は話声のブースターのように機能しますが、骨導は気導と打ち消し合うように作用しているようなのです。

 

イヤホン・ヘッドホンのスタイル

イヤホンやヘッドホンにはいくつかのスタイルがあります。

  • 耳介も包んでしまうイヤマフ型ヘッドホン
  • 耳介の上に乗せるスタイルのオンイヤー型ヘッドホン
  • 耳穴の中に押し込むタイプのインサート型イヤホン(密閉式、非密閉式)
  • 耳介の一部(concha)にも支えを求めるカナル型イヤホン

このほかにもさまざまなスタイルのイヤホンやヘッドホンがあります。

 

 

 

 

 

 

 

ヘッドホンやイヤホンの利用は、

  • 室内で一人静かに
  • 周囲に家族のいる場所で
  • 電車やバスなどの車内
  • 屋外の公園などで座って
  • 屋外でのジョギングやウォーキング
  • スポーツジムのランニングマシン

とこれもまたさまざまな条件で使われています。

 

暗騒音レベルを確認して使うヘッドホンやイヤホンを選ぶ

まずは現在のあなたのいる場所の暗騒音をチェックしてみましょう。

スマホがあれば、アプリのダウンロードですぐに自分の環境を確認することができます。

https://itunes.apple.com/jp/app/noiselevel/id302830630?mt=8

 

静かな室内なら暗騒音は30〜40dB、屋外なら40〜60くらいだと思います。人の話声は、ひそひそ声で30〜40dBくらい、普通の話声なら50〜60くらいです。70といえば大声に、80といえば耳元で怒鳴られたときの声の大きさになります。だいたいわれわれはがんぱっても70くらいまでしか声は出せないので周りがうるさくて足りない時は足りない分だけ近づくことになります。

大声を出しても会話が難しいときの周囲の騒音は、耳栓をしないと耳が壊れてしまうレベルの騒音(85dB以上)になっています。85dB以上の音はとにかくできる限りきかないに越したことはありません。また万一そうした騒音にさらされた時はその後耳の養生につとめることが大切です。できれば48時間は静かな場所で過ごすことが大切です。その際の静かさの目安は聞こえるか聞こえないか位の音の大きさに暗騒音があることです。つまりアプリのノイズレベルメーターで40dB未満の環境で過ごしましょうということになります。

閑話休題

われわれが屋外にいるときは実に騒音に溢れています。例えば電車通勤のとき、車内の暗騒音は、60〜75dBくらいはあるでしょう。聞き取るためには暗騒音よりも大きな音量でないと聞き取れません。ヘッドホンではなくイヤホンを使っている時には、その騒音よりも少なくとも20dBは大きな音を出さないと周囲の騒音に負けてしまいクリアに聞くことができません。密閉式のイヤホンは周囲の音をいくぶん遮断できるので音量を上げなくても車内での聞き取りは比較的良好ですが、非密閉型だと隙間から電車のノイズが入ってくるのでそれに負けないくらいに大きな音量にしなければならなくなります。車内で音漏れしている人のほとんどはこの非密閉式インサートイヤホンを使用している人たちでしょう。

では密閉式がいいかといわれると、耳の専門家として「はい」とはいえないのです。密閉式は音の逃げ場がないので、最初のボリューム設定を間違えると耳への負担がかぎりなく大きくなってしまうからです。130dBの音量なら耳は瞬時に痛んでしまいます。そんな強大音が偶発的に発生してしまったらどうにもなりません。だから密閉型はリスクの点からあまり好ましくないのです。

だから耳の専門家は皆そろってノイズキャンセルヘッドホンやノイズキャンセルイヤホンを使うことを推奨します。

 

なぜノイズキャンセルか?

クリアな音を聞くためには、

  1. 周囲はできるだけしづかな方が良い。
  2. 骨導による打ち消し効果が生じるような場所では聞かない。
  3. 耳介で外界のノイズを拾わないようにする。

などが必要になります。

しかし周囲を静かにすることは車内や屋外ではままなりません。そこでノイズキャンセルという技術が生きてくるのです。しかしどんなにすぐれたノイズキャンセル技術であっても骨導に勝てません。65dBを超えるようなノイズにあふれた環境にいるときはキャップや帽子であたまに直接音の影響がこないようにすることも大事です。ジェット機での長旅のときは、静かなクラシックを小さな音で聴きながらそれでいてふわふわのピローで頭を支えるなんてことをするだけ2の骨導も軽減できてで耳の疲労は驚くほどに軽減されます。

ノイズキャンセルヘッドホンは1と3を解決できますがつけてしまうと周囲の情報はほとんど耳から得ることができなるのが問題です。外界のモニタリングは耳の基本機能ですからあるていどは残しておきたいものです。そうした耳は守りたいが外の気配もある程度は聞きたいという要望に応えているのが、カナル(concha)型非密閉型ノイズキャンセルイヤホンなのです。

 

カナル(concha)型非密閉型ノイズキャンセルイヤホンのすごいところは、

  • 耳を密閉しないけどノイズキャンセルによって音量は控えめにできる。
  • 大きめの耳栓のひげのような部分がconchaにあたることで耳介軟骨伝導が適度に抑制される。
  • ヘッドホンと枕で生じる衣擦れ音がないので機内でつけたままでも快適に寝ることができる。

などができるからです。音響工学的には、耳をすっぽりと覆うノイズキャンセルヘッドホンが優れているのですが、実際につかう場面になるとそうではなくてノイズキャンセルイヤホンの方が耳に優しいのです。

 

いわゆる耳の中に差し込むだけのイヤホンは値段にかかわらず「車内で使うときには耳に悪い」ということわかっていただけましたか。

 

それじゃ、またね(*^。^*)

英語などは1500〜6000Hzは40〜55dBの音が聞きやすく、その帯域を聞きたいから軽度難聴で補聴器つけ始めます。日本語は1500Hz以下の母音主体の言語であるため、擬態語や擬声語を好むというのは気導と耳介軟骨導の干渉があるからクリアな音で聞き取れず繰り返される音が理解しやすいのでそれを好むのでなないでしょうか?