補聴器は役に立たない⁉️その1
こんにちは 聴覚評論家の なかがわ です。
今回は、補聴器のことについていろんな視点から考えてみたいと思います。
補聴器メーカの株価は上がる
yahoo株価から引用
国内最大手の補聴器メーカであるリオンのここ5年の株価を示したのがこのグラフです。
みなさんもご存知の2008年問題。退職者の急増が懸念されましたが、定年を63歳に延長したり、継続雇用などのソフトランディングで、2014年現在、今のところ混乱はないようです。今後さらに定年制度そのものが取り払われることになるようですから高齢者は今後も働き続ける、つまり高齢者の定義も変わるのなという印象をもってます。
雇用期間の延長で毎年10万人くらいは、軽度難聴者が労働者として市場に投入されている勘定になります。
市場規模でいうと欧米の30%にも満たないのが日本の補聴器マーケットですが、欧米の補聴器装用の動機の上位に「現在の地位を維持するため」 というのがリストされているように日本もこれから変わっていくのだと思います。
補聴器の出荷台数は10年ほど動きがありませんでした。新規ユーザーと必要祭がなくなる(経済的な買い替え困難、重度認知症、死亡)でバランスが取れていました。しかし、この3年の売り上げは約10万台も増えています。私はこの増加は、継続雇用あるいは再雇用された難聴労働者が補聴器入手の行動に向かったためでないかとかんがえています。そして彼ら新規ユーザーは不満をいうクレーマーにはなっていません。
補聴器に不満をぶつける人たち
さて世の中には補聴器は役に立たないと批判的な声が少なくありません。私も多くの方からまず否定的な話を伺います。
そんな時は決まって、
「今の補聴器は、ピーピー鳴るフィードバックも起こりませんし、新聞紙のくしゃくしゃ音もほとんど気になりませんよ。そういう方はきっと補聴器相談医という専門の資格持った先生に診てもらってないだけじゃないですか?」
と答えることがほとんどです。
それくらい補聴器の性能は良くなっているのですが上手く調整できていない人もいるようです。
補聴器に対する不満を理解するためにまずクレームについて整理してみましょう。クレームの生まれる背景がわかれば対処のやりようも見えてくるに違いありませんから。
補聴器ユーザーのクレームの定番は、
- 音は聞こえるけど意味がわからない。
- 必要のない音ばかり入ってくる。
- うるさい。
- 使っていると耳つまり感や痛みがひどくなる。長い時間の装用に耐えられない。
それらクレームは、
- 語音明瞭度がもともと悪い(難聴者の個別な問題)。
- 認知機能が低下してしまった。
- 調整のツメの甘さからOSPL90が不快域値レベル以上になってしまっている(実耳での特性評価を医師が行っていない、あるいは擬似耳でなく2ccカプラーでの評価でお茶を濁している。医師の不作為の過失)。
- 装用訓練の不足(補聴器技能者や言語聴覚士らが個別問題に対する対処法についての知識が不足している。あるいは装用者に対するカウンセリングの根本的な不足)。
と言い換えることができます。
クレームの原因は、利用者側の個体の問題と提供体制に依存した問題であることが見えてきました。
学童や就労者の難聴の場合
学童や働き盛りの難聴者のほとんどは自ら欲して補聴器を選択しています。決して「必要のない音ばかり入ってくる。」とか「うるさい。」とか言いません。彼らは 聴こえを補う器機 という認識で補聴器を利用しています。高度重度で補聴器が役に立ちそうもない難聴の方も積極的に肌身離さず使っています。
一方、家族がほとほと困って本人がイヤイヤ連れてこられた難聴の方は、学童や社会人の難聴の方と根本的な違いがあります。それは、聞こえに対する欲求の強さの差です。聞きたい、学びたいという欲求の差のことです。
もっともっと聞きたい 聴きたいと 貪欲な人は、いろんな音が聞こえてきても、自分の脳を使って聴きたい音に向けて聞こえのフォーカスを働かせます。そうしたフォーカシングによって情報の取捨選択がなされます。必要のない音を排除できる原動力は、この聴きとりたいという欲求に他なりません。
補聴器をつけたことで生じる音の洪水を前にたじろいでしまうのは、その人にすでに意欲やヤル気がなくなっている可能性が高いのです。
意欲の低下は、実は認知症の初期症状であったりします。
バーセルインデックス、やる気スコア、MMSE、そして、MRIでかくれ脳梗塞(ラクナ梗塞)がない調べることは、高齢者補聴器フィッティングの基本中の基本ですが、残念ながら、認定補聴器専門店も補聴器相談医もそんなことまで手が回ってないのが現状です。
つづく
それでは また^ ^